E.F.K series

ウィークエンド:ストロベリー
(出会いを思い出す清の話)

 泣きはらした真っ赤な目。
 溢れ、流れ、落ちる涙を拭ってくれたのは、体温の低い冷たい手。

 でも、知ってる。
 この手は、自分を傷つけるものではなくて、包み込むものなんだって……。


「どうした? にやにやして」
「別に」
「俺にもその幸せそうな顔、わけて」
 優しいキス。
 する前も、してるときも、した後も。
 このキスはいつだって羽根が触れるようで、甘ったるい。
「先生」
 でも、甘いだけじゃ物足りなくて、つい、自分から舌を絡めてしまう。
 驚いて目を見開くけれど、彼はその気になるとすごい。
 この、唇を重ねるという行為だけで、すっかり翻弄されてしまう。
「教えてくれる?」
「……ずるい」
 甘えるように胸に顔を埋めると、汗の匂いがして、実感する。
「清が誘ったんだ」
「そうだけど」
 この人は、自分のもの。
 誰のものでもなくて、この時間だけは、自分だけの先生。
「こーら。そんなとこ触って誤魔化そうとしてもダメ」
 首に手を回して、見上げると何をねだっているのか、彼にはバレバレだ。
「甘えん坊」
 くすくす笑いながら、やっぱり羽根のように柔らかなキスがふってきて、目を細めてしまう。
「王子がさ、言ってた」
「何を?」
「人は障害があればあるほど、それを乗り越えようと頑張るから、大きなものを手にできるって」
「ずいぶん落ち着いた意見。さすがだね」
 年齢のわりに落ち着いているキャメリアを、クラスの女子は憧れの対象として見ていた。好意をよせるものも多い。
 それは、教師にも言えること。
「先生は、王子のこと好きだよね」
「いい生徒だと思うよ。遅刻さえなければ」
「ふーん」
 首に回していた手を放して背を向ける。
「清?」
「みんなのお気に入りだからね。さすが王子」
「清」
「先生だって、王子が可愛いんだよね」
「きーよ」
 伸ばした腕が、彼をまるごと包み込む。
「拗ねてる?」
「別に」
「拗ねてるんだ」
「だから、別に拗ねてなんかっ」
 ぎゅっと力強く引き寄せるられて、肌が直接触れ合うと、胸の鼓動が伝わってくる。
「俺は生徒に、こんな風にはならない」
「じゃあ俺は、先生に生徒だと思われてないんだ」
「もちろん。学校で会う「杉山」は生徒だけど、大事な恋人の「清」を生徒だと思ったことはないさ」
 目をパチパチさせて、驚く彼を想像する。背中で見えないけれど、間違いないと思う。
「わかった? 清」
「……わかった」
「喜んでくれた?」
「……ばか」
「褒め言葉、ありがとう」
「……ん」


 素直じゃなくて、ごめん。
 でも、わかってくれるから、甘えさせて。


「ところで、清」
「なに?」
「さっきどうして、ニヤニヤしてたの?」
「あー……それは」
 期待に満ちた眼差しで見られたら、さすがに誤魔化せなくて、白状する。
「先生と、ここであったときのこと思い出してた」
「え?」
「先生の手、冷たかったなぁって。今も冷たいし」
「それじゃ、清が暖めてくれる?」
「やだ」
「きーよー」


 週末は、君とすごす、甘い時間。




2007/06/17 サイト公開


 
 
 

 
 
 

 
 
 

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